前者は、通常、六カ月から一年という短期間の業績予想が最もよい企業の株を選んで投資する方法である。
ウオール街では、企業の業績予測に多大の力を注いできた。
売上げ、費用、利益等の見通しである。
Gは、この方法の誤りは、売上げ、利益等は変動することが多く、また短期の経済予測によっても相場が影響を受けるところにある、と一言う。
そして第三は、もっと基本的なことだが、投資価値というものは、その企業の今月あるいは来月の収益、来四半期の売上げなどの数字によって決まるものではない。
その投資によって、長期の聞に投資家がどれだけのリターンを得られるか、という予測のうえに成り立つものだ、というのが彼の考え方であった。
短期のデータに基づいて行なわれた判断は、表面的で、一時的なものである場合があまりにも多いという。
変換と行動が重視されてきただけに、短期選択の方法がウオール街で圧倒的な支持を得てきたのは当然かもしれない。
成長株とは、簡単に言えば、。
売上げと利益の成長が、平均的な企業のそれを上回っている企業の株である。
Gが使っているN杜(NIC) の定義では、成長企業とは、利益が長期的に伸びる企業である。
この投資方法で成功することが難しいのは、成長株を見出すことと、その時点での株価がその企業の成長性を、すでにどこまで織り込んでいるかを見極めるという読みの作業にある。
この二点についての投資家の能力にすべてがかかっているということだ、とGは言っている。
各企業には、いわゆる利益のライフサイクルというものがある。
当初の発展段階では、企業の売上げは加速度的に上昇し、利益を生むようになってくる。
そして急速な拡張期に入ると、売上げはさらに上昇を続け、利益率は向上し、収益が急増する。
次いで円熟期に入ると、売上げ、利益とも頭打ちになる。
そして、最後の安定ー下降の局面になると、売上げは下降し、利益率と利益額の双方とも低下する。
Gによれば、成長株投資家はジレンマに陥る。
仮りに、急成長期にある企業を選ぶと、その企業の成功は一時的なものと考えるかもしれない。
その企業には過去の実績がなく、利益もそのうちになくなるかもしれない。
一方、成熟期にある企業のケースだと、成熟がもっと進んでいて、すぐにも安定下降期に入り、利益も減少に向かうのではないかと考えるだろう。
だから、その企業がライフサイクルのどの期の、どのあたりにあるのかを特定する能力というものが、何十年にもわたってアナリストを悩ましてきたのである。
仮りに、投資家が正確に成長企業を探し当てたとして、買値はいくらが妥当だろうか?その企業が業績好調だと知られていたら、株価は比較的高値になっているだろう。
その株価が割高かどうかを知る方法は?とGは問いかける。
その答えは、それは難しいということになるだろう。
さらに、もし仮りにそれを知る方法があったとしても、投資家は直ちに新しいリスクに直面することになるだろう。
つまり、企業の成長が、予想したより遅い可能性があるということだ。
そうなれば買値は高過ぎるし、株価は下がる可能性もある。
アナリストが企業の成長性を信じ、その株式が保有に値すると考えたとき、二つの方法がある。
相場全体が低水準にあるとき。
一般的には、何らかの整理商状。
通常は下げ相場てあるいは相場全体は必ずしも大幅に低水準でなくても、株価がその企業の実態から見て割安の水準にあると思われるときに買い入れるのである。
このどちらの方法でも、安全余裕率を見込むことができる、とGは言う。
証券を相場全体が安値のときに限って買うというためには、いくつかの難題を解決しなければならない。
まず、どの時点で相場が高い(安い)かを判定する公式のようなものをつくらなければならないことだ。
投資家は、相場の動向を占うという、とても確実にはでき難い作業にとらわれることになる。
次に、相場が妥当と思われる水準にあるときには、割安な価格で株を買うことはできないことだ。
だが、整理相場を待つというのはくたびれるし、結局は無駄なことになろう、ともGは言っている。
彼が勧めるのは、相場全体の水準にはとらわれずに、割安株を見つけることである。
彼自身も認めるように、この戦術が確実に効果を発揮するためには、割安株を選別する法則、テクニックといったものが必要である。
アナリストが目標とするのは、計算上の価値と比べて安値をつけている株式を見つけ出して、それを推奨できる能力を身につけることである。
相場の水準に関係なく割安の株を買うという考え方は、一九三0年代、四0年代においては卓抜したものだが、そうした戦術を打ち立てることこそGの目標であった。
概念の解釈を緩和してか安全余裕率。
というモットーを導入することにした。
これは、株式、債券などすべての証券への投資を、一本化して考えようというものである。
たとえば、アナリストが企業の過去の業績を分析して、直近の五年間、平均して固定費用の五倍の利益を上げてきたことを知ったとする。
この企業が発行する債券への投資は、安全余裕率が高い、とGは言う。
さらに、投資家は企業の将来の収益を正確に知ろうとする必要はない。
収益と固定費用との差を十分に見込むことができれば、万一、予想外の減益に見舞われたとしても投資の安全性は守られると考えてよい、と述べている。
証券の安全性についてのこの定義を、債券に適用するのはそう難しいことではない。
しかし、問題はGが株式についてこれを適用できるかどうか、というところにあった。
彼は、株価がその株式の実態価値を下回っている限り、安全余裕率が高いと説明する。
この説明が通るには、アナリストが企業の実態価値を確定する方策を持っていなければならない。
『証券分析」中のGの定義では、企業の実態価値とはか事実によって決定される価値。
となっている。
その事実とは、企業の資産、利益、配当そして将来の確かな見通し、などである。
Gは、企業の価値を決めるうえで最も重要な要素は、将来の収益力であることを認めている。
簡略化して言えば、企業の実質的な価値は、予想利益を出して、それに適当な資本還元値を掛け合わせることによって得られる。
この還元値乗数は、当該企業の収益の安定性、資産、配当政策、そして財務の健全性などによって決まるという。
しかし、この定義の適用には限界がある。
つまり、企業の将来の業績予想は必ずしも正確とはいかないからである。
アナリストの予測は、将来起こりうるもろもろの多くの要件によって、容易に変えられてしまうからだ。
売上げ、製品価格、費用などを予測することは難しい。
だから、乗数を適用することは、事態を一層複雑にしてしまうだろう。
だが、Gはめげることなく、この定義は三つの分野で十分有効に使えるだろうと言っている。
第一は、安定性のある証券、つまり債券、優先株などのケース。
第二は、比較分析に用いること。
そして第三に、株価と実態価値の差が十分大きく聞いていれば、株式の選別にも用いることができる、というのである。
Gは読者に対して、実態価値とは、とらえどころの難しい概念であることを認めるようにと求めている。
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